常に汗をかいている。ちょっとした緊張で大量の汗が噴出すように出てくる。特に運動しているわけでも暑いわけでもないのに汗が止まらない。他の人と比較して汗の量が多く、服がびっしょり濡れるほどの汗が出る。これらの症状を持っている人を多汗症と呼んでいます。多汗症は人によって症状の出る部位に違いがあり、多汗症の中でも特に掌に汗をかく症状が強い人を手掌多汗症といいます。手掌多汗症は、顔の汗のように人前でも目立たず、頭や脇、足のように激しい臭いの原因にもならないので、他の部位の多汗症と比較すると軽視されがちな面があります。でも、本人にとっては大変つらい症状です。手掌多汗症は、比較的軽く一日中掌がじんわりと湿っている程度というレベル1から、掌から汗が滴り落ちるほど大量の汗が噴出すレベル3まで、症状の段階でレベルが分けられています。レベル1の人でも、人と握手をすることができず、恋人とも手をつなげないと悩む人が多いものです。ましてや、レベル3の人の場合は、重要書類を手にしたら汗で文字が滲んでしまった、汗で用紙がフニャフニャになってしまった、破れてしまったというように社会生活に重大な支障をきたすことも少なくないのです。ですから、酷い場合には職種が限られるなど、人生の大きな障害となってしまうケースもあります。手掌多汗症のせいで、人並みの青春、人並みの人生を送る機会を奪われたと感じている人もいるくらい、つらい病気です。手掌多汗症は、交感神経が過敏すぎることが原因で起きているとされています。ちょっとした事で緊張状態になり、普通の人より多い汗を出してしまうのです。ですから、手掌多汗症の手術では、この交感神経の働きを遮断する目的で切除手術を行います。交感神経切除手術には、「腔鏡下胸部交感神経遮断術」という難しそうな名前が付いていますが、それほど難易度が高い手術ではなく、また、大規模な手術でもありません。そして、手術は掌に行うのではなく、手術名の通り、胸の手術です。脇の下にあけた4~5mmの穴から胸部交感神経をメスで焼き切るという方法が現在では一般的に行われています。胸の手術といっても、手術時間はおよそ30分程度で済み、入院することなく当日帰宅できるケースも多いようです。手術跡も殆ど目立たないでしょう。しかし、この手術には副作用もあります。当然ですが、人によって大きく個人差があり、手術を受けた人全員に副作用が出るわけではありません。手足の発汗を抑えることはできるのですが、その代わりに別の部位からの発汗が増える「代償性発汗」というのが第一の副作用です。背中や胸の下に症状が多くあらわれるといわれています。その他にも、頭痛や喉の渇きといった症状も多く報告されているようです。いずれにしても、一度焼き切ってしまった交感神経は元には戻せませんし、その後に起こる副作用についても、事前に確実に把握できるわけではありませんから、手術は最終的な手段として考えたほうが良いでしょう。